原爆とルイビトンと日本人

8月と言えば終戦記念日であり、広島・長崎に原爆が落とされた日でもある。
少々遅れたが、この原爆トピックに関して話してみたい。原爆と私たちの人生に関してだ。

多くの人々はマスメディアで目にする以外は、原爆は自分と無関係の存在に思えてきている。だが、そのようなことは全くなく、終戦と原爆により私たちの現在の思考や価値観は全く変えさせられることになった。

その例が1995年に起きた、フランスのムルロア環礁で起きた核実験だ。

フランスのシラク大統領が1995年6月13日に核実験再開の方針を発表し、日本時間の9月6日午前6時半人類史上2043回目の核実験(米国務省調べ)がフランス本土から1万キロほど離れた南太平洋ムルロア環礁で行われた

あの当時私はフランス学専攻の大学生だった。
「核実験などと今時時代遅れだ!」と非常に憤慨していた私は、自然や魚をとても愛していることもあり、フランス政府が許せなかった。
日本政府や広島市長などは核実験に抗議し、それらの報道もよく流されていた。
フランス製ワインやチーズ、ブランド製品などの不買運動を!という声もTVを通じ流されてきたので、「あ、その手があったか!」と私は対抗策に喜んだ。
抗議するといっても平和的な方法でするべきであり(そうでなければこちらが野蛮人になってしまうからね)、フランス製品の不買運動は、フランス経済に打撃を与えてこちらの意思を伝えるとても良い方法だと思ったからだ。
私もワインを買うときはフランス製ではなくイタリア製を選ぶなど、この不買運動に参加しようと努力し、その成果を期待していた。

ところがだ。結局、その時期のフランス製品の日本への輸入量は平年通りだったのである。日本人はいつも通り、フランス製のチーズを食べ、いつも通りフランス製のブランドバックを手に持ち、いつも通りフランス製のブランド衣服を購入していたのだ。
フランス人よりもルイビトンを多く購入する日本国民。
そんなに皆、フランスブランドが好きなのか!私は、当時とても落胆したものだ。
原爆を落とされた私たちの国。なのに、核実験をしていても、フランスブランドを優先する。私たち価値観の優先度は、お洒落なフランスブランドが上で、自分たちの歴史やこうあるべきだというプライド、方向性、意思などはなくなってしまったのか。

今も何も変わっていないと思う。街では皆同じようなバックを持って歩いている。それブランドを持たないと皆、心が穏やかではないというように。
でも。でも。
シャネルやルイビトンなどフランスブランドを持っていても、フランス語も話せるどころか、詩も読まないし、哲学もない、頭の中が空っぽの日本人。特にブランド大好きな日本人ほどそうだ。
高いブランド品を持っていても、生き方や精神がへなちょこなので、全く合わないのに。
電車の中でみる女性達は高いブランド品を手にしていても、とても幸せそうな人はそう見受けない。

私たち日本人の価値観は崩壊してしまったのだ、原爆を落とされたと同時に。

高いブランド品を持たなくてもいい。 原爆を落とされた日本人なんだから、世界で先頭に立って「原爆は駄目だ!」とはっきり言える強い魂を持った日本人になりませんか。失った強い価値観と美徳を取り戻そう。


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